下水処理場から排出される処理水は全国で年間約130億m3(2000年国土交通省監修「日本の下水道」より)にのぼります。放流先である河川、海域等の公共水域の水質改善に向けて下水処理水の水質向上が求められることに加え、 循環型社会の形成とともにその再利用への関心が高まっています。しかし、「コスト」や「安全性」の点から、現状の再利用率は約1%程度にとどまっているものと推定されています。
日立プラント(本社:東京都、社長:石黒 元)と日本下水道事業団(理事長:安中
二氏)が1998年度から2年半に渡って共同開発した「日立膜型下水処理システム」は、従来の生物処理と精密ろ過(MF)膜による膜分離を組み合わせた次世代型下水処理システムで、建設コストが従来法(オキシデーションディッチ法+砂ろ過、消毒・当社比)に比べ低減できること、
3,000m3/日以下の処理規模では維持管理コストなどを含めた年間総事業費でも従来法と同等かそれ以下であること、BOD、窒素、リンはもとより膜による分離によって細菌類も除去可能なことから、処理水の再利用が期待されています。
今回、下水処理水の再利用促進に向け、同事業団と共同で「日立膜型下水処理システム」の処理水について、トイレの洗浄水、工業用水はもちろん、修景用水*1、親水用水*2等、人に直接触れる施設に再利用する際の実用上の安全性を検討するため、幅広い水質項目について実験・評価しました。
*1:公園等の人工池・噴水等に使用する用水。
*2:左記施設で、かつ人が触れて水遊びができる施設に使用する用水。
実験では、従来法(標準的な活性汚泥による擬似嫌気好気法)を採用する中規模下水処理場と、そこに隣接する本システムの実証プラントで、2001年度以降継続的に双方同一の原水を処理し、その水質を比較・評価しました。
この結果、本システムからの処理水は、BOD、窒素、リン等の一般水質項目は極めて良好でした。なお、本システムの標準的な仕様では反応槽に凝集剤を添加してさらにリン除去効率を高めることができますが、ここでは凝集剤によるウイルス類の除去効率の影響を排除するため、凝集剤非添加の条件で性能を確認しています。また、大腸菌も100%除去でき、腸管系の病原性ウイルスの代替指標として用いられる大腸菌ファージについても99.999%の除去率が確認できました。さらに実際の病原性ウイルスであり、カキ食中毒等の原因となるノロウイルス(SRSV)の除去についても東北大学大学院工学研究科の大村教授のご協力により検討したところ、除去率99.99%以上の結果が得られました。これらのウイルス類は膜の孔径である0.4μmよりも小さな粒子であり、通常のフィルター効果では除去されませんが、共存する高濃度の活性汚泥に吸着されて除去されたものと推定されます。これらの結果から、修景用水への利用や親水用水等への再利用の有効性が確認できました。
今後当社では、本システムを、処理水放流先の水質保全や安全性が求められる、あるいは処理水の再利用を計画している下水処理施設向けに積極的に拡販していく予定です。
ご参考 実証実験結果(冬期の例)
1.一般水質項目
- システムは水温を問わず、標準活性汚泥法と比較して同等またはこれを上回る処理性能を示した。
- 色度については、親水施設に処理水を直接利用する場合は、オゾンや活性炭等による色度除去工程が必要となる場合がある。
- 従来法は擬似嫌気好気法によりリン除去率を高めているのに対し、本システムは凝集剤無添加運転のため除去率が低くなっている。
2.細菌類
- *1 大腸菌群数(大腸菌としての生理活性を示す細菌数)は、糞尿由来の病原菌の存在度合いを表す指標として用いられる。大腸菌とその類縁種を含み、下水処理水の規制値は3000個/ml以下。
- *2 糞便性大腸菌群数は、糞便由来の大腸菌の数を表す。
- *3 人の腸内に大量に存在する大腸菌に寄生するウイルス。腸管系の病原性ウイルスの挙動評価指標として使われる。PFUは活性を持つウイルス粒子の数。
- *4 食中毒の原因となるウイルス。主として人の腸管に感染して増殖し、糞便とともに体外に排せつされるため、水環境中では感染者の糞便が流入する下水中に多く存在する可能性がある。Genomeは分子生物学的手法により定量されたウイルス染色体の数。
「日立膜型下水処理システム」システムフロー


